セックスレスの現実と夫婦関係への影響

あなたとパートナーの間に、少しずつ距離が生まれていることに気づいていますか?
日本の夫婦のセックスレス率は51.9%と、実に2組に1組以上の夫婦が性的な親密さを失っている状況です。さらに最新の調査では、婚姻関係にあるカップルの68.2%が「セックスレス傾向」にあるという衝撃的な結果も出ています。このうち完全なセックスレスと回答した割合は43.9%にも上り、20代から40代に限定しても大きな差はなかったことが報告されています。
私たちが出会った頃は、お互いへの愛情表現が自然と溢れていたのに、いつからこんなに遠い存在になってしまったのでしょうか。
セックスレスという言葉は、日本性科学会によれば「特殊な事情が認められないにも拘わらずカップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も長期に亘ることが予想される場合」と定義されています。ただ単に性行為がないだけでなく、キスやスキンシップなどの親密な接触も含まれるのです。
そして気になるのは、セックスレス夫婦の離婚率。データによると、セックスレス夫婦の離婚率は25.2%にものぼります。セックスレスで離婚を検討したことがある割合は女性31.5%、男性は29.5%となっています。
でも、ちょっと待ってください。
セックスレスは本当に「悪いこと」なのでしょうか?
セックスレスの原因を理解する

セックスレスの原因は一つではありません。多くの場合、複数の要因が絡み合って親密さが失われていきます。
セックスレスになった時期について調査結果を見ると、結婚1〜3年目が59.3%と最も多く、次いで結婚4〜6年目が20.7%、結婚7〜9年目が6.9%、結婚10年目以降が13.1%となっています。特に結婚初期の段階でセックスレスに陥るケースが多いことがわかります。
セックスレスの主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
- コミュニケーション不足:お互いの気持ちや欲求を伝え合うことができていない
- ストレスや疲れ:仕事や家事、育児による心身の疲労
- 健康上の問題:ホルモンバランスの変化や更年期症状、身体的な不調
- 性的な価値観や好みの違い:セックスに対する考え方や期待の不一致
- 年齢やライフステージの変化:加齢による身体的変化や生活環境の変化
特に40〜50代の女性にとって、更年期による身体の変化は性生活に大きな影響を与えることがあります。膣萎縮(膣の皮膚が薄く乾きやすくなる状態)などの症状が現れると、セックスに痛みを感じるようになることも。
また、男性側の原因としては、疲労やストレス、テストステロン量の低下による性欲の減退、パートナーからの拒否による自尊心の低下などが考えられます。
あなたは、パートナーとの間にどんな原因があるか考えたことがありますか?
「遠慮セックスレス」という落とし穴

セックスレスの中でも特に多いのが「遠慮セックスレス」です。これは一度パートナーからの誘いを断ったら、それ以降誘われなくなってしまうというパターン。
たとえば、夫が妻からの誘いを断ると(たとえ、それがたった一回であっても)、「ああ、この人はもう私としたくないんだ。私に興味がないんだ。もう誘うのはやめよう」と妻が感じるようになります。
実際には夫が拒否する理由は単なる仕事の疲れであったり、加齢による精力低下だったりで、妻のことが嫌いになったわけではないのです。しかし、そこをうまく説明できずに、「いや、ちょっとムリ……。」なんて断ると次はもう2度と誘われなくなってしまうことも。
同様に、妻が夫からの誘いを何度か断った場合、夫は「これは今回だけじゃなくて、もう2度としたくないということなのかもしれない……。」「本人もしたくないようだし、自分も傷つきたくないからもう誘うのはやめよう……。」と考えるようになります。
こういった葛藤が高まると「自分はパートナーから嫌われているんだ」とまで感じるようになっていくのです。
なぜこのような「遠慮セックスレス」が起こるのでしょうか?
その理由の一つは、性を不純なものとして認識していること。ふしだらなこと、不健全なこと、そう認識していると断られたときに強い罪悪感を感じてしまいます。
もう一つは、恥のパワーに圧倒されていること。誘って断られたとき、「断られるのが恥ずかしい。自分を全否定されたように辛い。だったらもう誘うのはやめよう。相手もしたくないんだし」と感じてしまうのです。
セックスレスから脱出した夫婦の共通点

セックスレスから回復した夫婦には、いくつかの共通点があります。彼らの経験から学べることは多いはずです。
ある40代の夫婦は、子育てと仕事の忙しさからセックスレスに陥りました。最初は気にしていなかったものの、次第に会話も減り、家庭内別居のような状態に。
「私たちが変わったきっかけは、単純な『話し合い』でした。でも、その話し合いは特別なものだったんです」と妻は振り返ります。
彼らが実践したのは、以下のようなアプローチでした。
1. オープンなコミュニケーション
セックスレスから脱出した夫婦に共通するのは、性について率直に話し合える関係を築いたことです。
「最初は恥ずかしくて言葉が出てこなかった」と夫は言います。「でも、お互いの気持ちや不安、希望を正直に伝え合うことで、思っていた以上に理解し合えたんです」
大切なのは、非難や責任追及ではなく、お互いの気持ちを「私は〜と感じる」という形で伝えること。相手を責めるのではなく、自分の気持ちを素直に表現するのです。
2. スキンシップの段階的な回復
セックスレスから回復した多くのカップルは、いきなり性行為を再開しようとはしていません。まずは手をつなぐ、ハグする、キスするといった基本的なスキンシップから始めています。
「最初は毎晩5分だけハグする時間を作りました」と別の夫婦は教えてくれました。「それだけでも、お互いの存在を感じられて、少しずつ距離が縮まっていくのを感じました」
身体的な接触は、オキシトシンという「愛情ホルモン」の分泌を促進し、親密さや信頼感を高める効果があります。
3. 生活リズムの見直し
セックスレスを解消した夫婦の多くは、二人の時間を意識的に作り出しています。
「子どもが寝た後の30分は、スマホを見ないで会話する時間にしました」
「週末の午後は、二人だけのデート時間を確保するようにしています」
このように、意識的に二人の時間を作ることで、日常の中に親密さを取り戻す機会を増やしているのです。
親密さを回復するための実践的アプローチ

セックスレスから脱出するためには、具体的にどのようなアプローチが効果的なのでしょうか。
まず大切なのは、セックスレスを「解消すべき問題」としてプレッシャーをかけすぎないこと。スウェーデンの性科学者マーリン・ドレヴスタム氏によれば、スウェーデンの性科学界では「セックスレス」という言葉すら使わないそうです。なぜなら、セックスの定義は人それぞれであり、髪をなでたり、肩を抱き寄せたりするのも性的コミュニケーションと考える人もいるからです。
日本や多くの国では、セックス=挿入から射精、という男性目線のセックス観がありますが、もっと広い視点で親密さを捉えることが大切かもしれません。
以下に、親密さを回復するための実践的なアプローチをご紹介します。
1. 「性」についての対話を始める
多くの日本人夫婦にとって、性について話し合うことは難しいものです。しかし、お互いの気持ちや希望を知らなければ、解決の糸口も見つかりません。
「最初は恥ずかしくても、少しずつ話せるようになりました」とあるカップルは言います。「最初は『今日はどうだった?』といった日常会話から始めて、徐々に『最近、寂しいと感じることがある』といった感情の共有へと進んでいきました」
対話のコツは、非難せず、相手の話をしっかり聞くこと。「あなたが悪い」ではなく「私はこう感じている」という表現を心がけましょう。
2. 小さなスキンシップから始める
いきなり性行為を再開しようとするのではなく、小さなスキンシップから始めることが大切です。
- 朝と夜にハグする習慣をつける
- すれ違うときに軽く肩や腕に触れる
- テレビを見るときに隣に座る
- 一緒にお風呂に入る時間を作る
「最初は意識して行動に移さないと忘れてしまうので、スマホにリマインダーをセットしました」と笑うカップルも。継続することで、次第に自然な行動になっていくそうです。
3. 二人の時間を意識的に作る
忙しい日常の中で、二人だけの時間を意識的に作ることも重要です。
「子どもが寝た後の30分は、スマホやテレビを消して、お茶を飲みながら今日あったことを話す時間にしています」
「月に一度は、お互いの予定を調整して、二人だけの外出の日を作るようにしました」
このような時間を定期的に持つことで、お互いへの関心を維持し、親密さを育む土壌を作ることができます。
4. 専門家のサポートを受ける
長期間のセックスレスや、根深い問題がある場合は、カウンセリングなどの専門的なサポートを受けることも検討してみましょう。
「最初は抵抗がありましたが、第三者の視点が入ることで、自分たちでは気づかなかった問題点や解決策が見えてきました」と、カウンセリングを受けたカップルは語ります。
特に、40〜50代の女性の場合、更年期による身体的な変化が性生活に影響を与えていることもあります。そのような場合は、婦人科医などの医療専門家に相談することも大切です。
親密さの本質を見つめ直す
セックスレスの問題を考えるとき、単に「性行為の回数」だけに焦点を当てるのではなく、夫婦間の親密さの本質を見つめ直すことが大切です。
親密さとは、性的な接触だけでなく、感情的なつながり、信頼関係、お互いへの思いやりなど、多層的な要素から成り立っています。
「セックスレスを解消しようと必死になるあまり、相手を思いやる気持ちを忘れてしまっていました」とあるカップルは振り返ります。「結局、お互いを尊重し、理解し合うことから始めたとき、自然と親密さが戻ってきたんです」
大切なのは、お互いの気持ちや状況を理解し、尊重し合うこと。そして、二人の関係をより良くしたいという共通の目標に向かって、一緒に取り組む姿勢です。
あなたとパートナーにとっての「親密さ」とは何でしょうか?
それを一緒に探求していくプロセスこそが、セックスレスから脱出するための本当の道なのかもしれません。
まとめ:親密さを取り戻すための第一歩
セックスレスは日本の多くの夫婦が直面している課題です。しかし、それは決して解決不可能な問題ではありません。
セックスレスから脱出した夫婦の経験から学べることは、オープンなコミュニケーション、段階的なスキンシップの回復、二人の時間の確保など、具体的なアプローチの重要性です。
そして何より大切なのは、「セックスレス」という状態にとらわれすぎず、お互いの気持ちや状況を理解し、尊重し合うこと。親密さの本質を見つめ直し、二人の関係をより良くしていくという前向きな姿勢です。
今日から、小さな一歩を踏み出してみませんか?
パートナーとの会話を少し増やす、軽くハグをする、一緒にお茶を飲む時間を作る…。そんな小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化をもたらすかもしれません。
あなたとパートナーの関係が、より深い親密さと理解に満ちたものになることを、心から願っています。
